2024.11.16 Plastic Tree 私にとってもベストセトリだった『モノクロームシアター』


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Plastic Treeの結成30周年公演「モノクロームシアター」へ。

いやもう、最高のセトリでした。

 

 

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事前情報から「昔の曲をいくらか演るのかな」とは思っていたのですが、前半部でインディーズ時代からの布陣を、そして後半部で現メンバー体制になってからのベストセレクトを惜しみなく叩き込むようなセットリストを展開。

──よく「Plastic Treeの良さをアルバム3枚で伝えるなら?」といったファントークがありますが、私的には偏りを無視して選ぶなら『Hide and Seek (Rebuild)』『インク』、そして最新作にしてセルフタイトルのPlastic Treeを選びたいもので。偏りすぎだろ。

勿論他のアルバムもまったく捨て難いのですが、パブリックなバンドイメージについてはもう『Plastic Tree』に全部託すとして、初期の暗黒幽霊感を大人のクオリティでパッケージした『Hide and Seek (Rebuild)』、そしてPlastic Tree特有の浮遊感やポスト・ロックっぽさ、現と夢が溶け合うような情緒らが大いに宿っている『インク』に “プラにしかない味” が集中していると受け取っているからなんですね。

そこにきて今回のこのセトリ。“ずっと” 最高でした。

(以下、画像は公式のSNSアカウントより)

 

 

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まさかの一曲目。この曲で始まるとは思わなんだ。

 

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これが30年選手のお顔か? というくらいキマっていた初期イメージ有村竜太朗のビジュアル。

ゴシックの素晴らしいところは、歳を重ねても、いや歳を重ねたからこそ禍い美しさが際立つところだよなと改めて実感。それはすぐ横にいるスーパーリーダー長谷川正もまたステージに現れる度に立証していることでもありますね。

 

 

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多くのヴィジュアル系バンドの歩みとして「初期はダークな曲が多いが、後年はそういうムードでもなくなる」ということがあり、それはPlastic Treeも例外ではなく。私はその変化自体もとても素敵だと思っているのですが、しかし一方で「ダークな表現力こそ、年季が入ってからがホンモノだよな」ともいろんなバンドを見ていて思わされるのです。若気の至りを超えた絶対の闇の匂いがある。

こういう例えも悪いかもしれないけれど、初期の音源がまだまだ有り物勝負のインスタントコーヒーだったとしたなら、スキルとノウハウや解像度に磨きのかかった後年製は「本物の豆から作られています」というような濃厚さがある(勿論「インスタントだからあのバランスが出来たんだな」ということもありますが)。 それこそ筆者が再録アルバム『Hide and Seek (Rebuild)』を強く支持する理由の一つでもあり、また例えばキュアーやボウイがそうであったように、ダークな表現こそ年輪を得てからが真骨頂なのだと思うのです。

 

 

MCなしかつスピード感のある楽曲たちでまたたく間に畳みかけ、あっという間に『サイコガーデン』のお時間。「もうこの曲? ちょっと早くない?」と思ったのもまた束の間、そんな一瞬の日々の彼方に君臨するようにテントを描いたスクリーンが映し出され、あの曲の旋律が。

 

 

雨が降って寒くない冬のはじまりの夜、この街にもサーカスがやって来た。

私はまだまだ新参(?) なので初参加したプラのライヴが3年前の「PPP#10 サーカス」だったのですが(本当に新参だ)、その初現地以来の『サーカス』。何度聴いても最高の名曲。

早くないかとは言ったものの、実際にインディーズ時代はこれくらいのスピード感でサーカスまで演っていたんだろうなあとも想像が過る前半部でした。

 

 

 

さて、むしろここからが本番とも言いましょうか。前半がインディーズ時代からの再構築でなるほどねとも思うところでしたが、ではここからの後半パートはどうくるんだろうか?

いろんな想像が巡るなかで始まった後半一曲目が

 

 

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優勝。Thirteenth Fridayでいちいち優勝するな。

これまでにも何度か書いたと思いますが、筆者が「Plastic Tree全部聴くぞ!」と決心した直接のきっかけがこの曲だったので、それ相応に思い入れもあるのです。我らがシューゲイザー

 

しかもここから続いた曲がアルバム『インク』からのシングル曲『静脈』『くちづけ』もう俺が作ってるセトリかなと思いました。

 

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この最高布陣で始まった私の好きな空気感を体現するように、そこからまたサナトリウム』『雨中遊泳』『マイム』と。サナトリウムはインクよりちょっと前の楽曲ですが、湿りと夢見のあるポスト・ロックっぽさで以後のムードとリンクしているように感じます。雨中遊泳の映像、綺麗だったな。

 

 

そんな情緒で叙情的な流れを総括するように、後半部かつ本編ラストにはやはり最新作からのこの曲、『メルヘン』を。

 

 

なんとなくこの曲はきっと演るだろうなあと予感していました。サーカスと地続きな世界観とも思える楽曲ですが、実際に『サーカス』と一緒に演奏されるとこの公演全体を象徴しているようでもあり、感慨深いものもありました。

──何度か “年季” とか “年月” とかいう言葉を綴ったりしていますが、この『メルヘン』という曲にはそういった長い日々の中にある痛みや軋み、愁しみ、藻掻き、そして幸福感や祈り、そういったものがよく表れている本当に素晴らしい新たな名曲だと思います。

 

 

 

🪼

 

 

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アンコール前にはメンバーそれぞれのMCと、結成30周年と合わさるバンドリーダー・長谷川正の誕生日祝いのシーン。「あまりこの年齢になると嬉しいことでもない……」とお決まりの言葉を口にしながらはにかむリーダー。でも私はこの日深く確信しましたよ、「バンドマンって歳とってからの方が絶対的に格好良いよな」って。

また竜太朗からは「多くは語らないけど、正君が作った今回のセトリには意味があります」といった言葉があり、そこからのアンコール1曲目が『バンビ』でした。

 

バンビ

バンビ

 

ええ。人との別れ、常にこの曲のようでありたい。

淡い 甘い 記憶で僕は

案外、悲しいだけじゃないかもね

それはとてもまぶしい日々で

 

そして最後の締め括りに『エンドロール。』。いつぞや以来のエンドロールでしたがやっぱりライヴだと全然音が違いますね。音源化してほしいくらい良い音でした。

 

 

 

公演終了。

もっとリーダーを祝えよと煽りまくっていたナカヤマアキラはなんだかいつもよりテンションが高かった。

ケンケンは今日もしっかり張り切っていた。

正リーダーは「真面目な話ばっかりしてる」と突っ込まれながらもニコニコとしていた。

竜太朗はバースデーケーキをひっくり返そうとしたりとお茶目しながらも周りとファンをよく見てリードしていた。

 

コクを増しより “中身が宿った” とも言いうる闇色の最初期楽曲たちと、今が一番良いぞと言い張れる夢幻の情緒を帯びた最新曲たち。そして “樹念” 日への深い祝福に満ち溢れた素晴らしい公演でした。

そうして私達はここ六本木から、東京メトロで深海を漂流しながら帰っていったのです。

 

🪼