もしRPGを、「あらかじめ用意された物語を美麗なアニメーションと舗装されたゲームシステムで辿るもの」とするなら、このゲームは不用意かもしれない。
しかしRPGを「舞台上の情報から自分で考え、自分で選び、引き返しのない道を進み、自分でどうすれば難関を超えられるか格闘するゲーム」とするなら、このゲームは最高にRPGをしているだろう。
『SaGa Emelald Beyond』はそういうゲームだと思う。
……などと出だしらしく書いてみましたが、まだ5組の主人公たちの3人(内2人はとても完全クリアを辿ったとは思えない)しか回りきっていません。プレイ時間はそこまでで大体35時間弱。そんな奴が「サガエメ、理解しました。」みたいな論評を置く気はまるでしないので、単純に日記形式で振り返っていこうかと思います。
……「賛否両論」という評価について? 発売したてのサガで「賛否両論」ならかなり良い方なんじゃないですか (笑)。多分ルートや内容の開拓が整った後になって名作名作言われるんですよ、シリーズの伝統的に。知らんけど。
◆ アメイヤ編(一周目)
「小学生・泉ゆめは」という仮の姿をもって京都のミヤコ市へ修行に来た魔女のアメイヤ編。
作中に表示される「ウェーブ」を辿って進む道を選ぶ本作のシステム。
一見エスコートがはっきりしているようにも見えるが、このタイトルは「何の説明もありませんがダンジョンを途中で引き返すとシナリオが分岐します」とかを平気でやってきたサガシリーズだ。多分、私を含む多くのユーザーが表面どおりには信じず恐る恐る回っていたんじゃないかと思う。
ゆめはちゃんあまりにミステリアス美少女すぎない? クラスメイトの蓮くんと『学校の怪談』チック(+謎の魔法少女お姉さん)なイベントを重ねていく。
付きの猫も楽しそうだぞ。
寝菩薩かよ
ミヤコ市から異世界へと旅立つ途中。お馴染みのせんせいがいるなー。
今作ではミッションをこなすと素材アイテムを寄こしてくれるせんせい。多分このゲームを遊びこんだ頃には「本当にせんせいのおかげでした!」と言っていることでしょう。
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異世界の一つ『グレロン』。謎の呪いか何かで人々が凍った町。
「最終皇帝とは何者だったのか」、その謎を中心に人々を助けたり助けなかったり。基本は事件の正体を暴きにいく方向で進んでいたのですが……
いかにも最終確認のような質問。
何が怖いって “ここは絶対に選択肢とか出てきそうな流れだったのに、そういうのが何も出なかった” こと。もう既にこの世界で迎える運命はどこかで決定している。
復活した最終皇帝との戦いへ突入。間違いなく他のルートもありますみたいな雰囲気を出しつつ、しかし「あ、あそこらへんで分岐したんだな」というのが初見ではまるで分からない。サガの始まりだ!
しかもここまでは「今のところバトルは余裕だな」と思ってたのに、この皇帝はやたら強い! 「敵の頭数を減らして良い気になっていたら『独壇場(※一定の条件で発生する一人連携攻撃)』が飛んでくるぞ」という今作のシステムの洗礼を思いっきり浴びたボスバトルだった。
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お次は話題のゴシックメイド・ドロレスちゃんと出会いながらゴシック世界『ヨミ』を攻略。
それじゃあ再びミヤコ市の日常に戻ろうかと思っていると……
待ってくれ。待ってくれ。
終わった。
他のユーザーさんの情報によると2周目に入ってみたら5倍くらい分岐ルートが増えていたらしい。
そして河津神のコメントによるとおそらく「アメイヤ編でラスボスが出る条件はかなり大変」とのことで、数あるプレイヤー達が「そもそもラスボスが登場するルート自体を探し回る」という異様な冒険に挑み、先日になってようやくSNSで発見者が出たという。何だこのゲーム!?
ラスボスはどうすれば出るのか? そもそもラスボス(強大な敵)が出るのが正解なのか? 他のエンディングはどうなっているのか? ……とりあえず言えることは、「あ、俺の常識が前提から通用しないぞ」と思わせられるこの感覚こそがまさにサガシリーズの体験なんです。
◆ 御堂綱紀編(一周目)
家の習わしに基づいて街を怪異から守るため、クグツの従者たちと共に力を手にする旅に出た御堂綱紀の冒険。
こちらは初期メンバーでクグツのコマチさん。戦闘の節々にやたら綺麗な声で歌を詠んでくれる素敵なミス・クグツ。筆者のお気に入りです。リタさんと2人術師で戦闘のエースだったな。
リタさんとは最初の異世界で仲間になる素敵な魔女のお姉さん。
素のリアクションやめろ
視界に映る「ウェーブ」について説明する綱紀。
そして一番細い道を選ぶお姉さん。リタさんかっこいい!
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魔物との交戦が繰り広げられている世界『ブライトホーム』に。いかにも「どこを防衛し、どう立ち回るのか考えろ」というムードだ。
畑から守ったらディスられた。いや、まず食料資源から守ろうと思って……
お次は火・水・風・土の勢力が争いあっている世界『サンク』。おそらくどこの勢力も「向こうが攻めてくるから」みたいな言い分。知〜らねって思ってどの勢力にもフラフラと回っていたら最後の一組まで潰しあってました。
砂に埋もれた『クロウレルム』。喋る案山子現る。
見覚えのあるはにわも現る。
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そんなこんなで力を集めてミヤコ市へ帰還。この街の女性陣、全体的にホラー作品に出てそうな顔立ちですね……
他人視点で見たらやっぱり異質なミステリアス美少女すぎる。
久しぶりの故郷に、まさしく異変を起こそうと暗躍する謎の存在。そしてついにラスボスっぽい敵の登場!
ここで初ラスボス(初ラスボスとは)を撃破! したんだけれど……ラスボスにしては弱い! いやボス並の強さはあったとは思うが、サガのラスボスって考えたら「絶対こんなもんじゃないでしょ」と言ってしまうような。
綱紀編も敵のことも味方のことも分からないことばかりのまま一旦エンディングへ。
綱紀もアメイヤも「もう一度回ってからが本番ですよ」というムードがありありでしたが、筆者の判断としてはまず全主人公を回ってみる方向で進みます。
◆ ディーヴァ ナンバー5編(一周目)
歌が得意なメカだが、禁じられた歌を歌ってしまったことで、メモリや歌唱機能を剥奪され、人型のボディまで失ってしまう。
なくしたものを取り戻すため、生まれた世界を離れることを決意する。 (公式サイトより)
マネージャーこと隊長うさんくさ〜〜〜い!
アメイヤ・綱紀編では5人編成に対して初期メンバーも5人だったのに、ディーヴァ編は隊長含めて開始6人だし。どうなんだこの男? う〜ん……
スタメンだ!!
怪しい罠の匂いが何だってんだ。私はロマサガ3の初見無知識プレイでサラを選んじゃった男だぞ(その時はやり直しました)。
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まずは広大なハイテクSF世界『デルタベース』から。
外界から来た我々一行も「エイリアン」と扱われながら、異生体の研究だの次元転送だの呪いの本だのに付き合ったり付き合わなかったり、頼られたり利用されたりしていく。
トラブルメーカーのマグスさん、話すとロクなことが起きないけどかわいい。
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機が熟したら新たな世界へ。行く先は……
変な笑い出た。どういう選択肢だよ。
〘!〙マーク付きがオススメとのことですが、自分で選びたいし、サガ本体のオススメなんて信じるものじゃないので自分でテキストから判断して選んでいきました。
またディーヴァ編で『短命種』という種族のブラーが仲間に。少しずつ最大LPが減っていく代わりにステータスが上昇し、LPが0になるとそれまでの技を引き継いで復活するという奇妙な種族。一人で伝承法をやっているのか?
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なんかの体内みたいな世界に来ちゃったが……
器官を守る神官たち、カン=ケルゥ(cancer)という滅亡の伝説、そのカン=ケルゥに侵されていく仲間たち、腐敗を止められない世界……
体内での重兵器爆撃戦に定評のあるサガシリーズ
そしてついにカン=ケルゥに「コウタイ」を撃ち込み、自分たちは滅亡を免れないこの世界から脱出。白血球ビャクさんは……
「心」ってやつか……
その後も旅は続き、
大都市『キャピトルシティ』では大統領選挙の行方を左右させ、
『ヴェルミーリオ』では科学都市を復旧させていたらまさかの熟年昼ドラ劇場に巻き込まれてしまい、
技名に元カノの名前を入れているかつての男。オディオかよ。
……
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「魔物らによる園への侵食を防ぐために種の巫女が選ばれ、巫女は試練を超えて『エプイケ』と呼ばれる花になり、外敵による侵食から園を守り、そして枯れる頃にまた次の巫女が選ばれる」……短命種の園『カマラ』はそんな世界だと解釈したらいいだろうか。
種の少女レラは『エプイケ』になった親友を追い、自身も『エプイケ』の巫女に選ばれ、試練のなかで決意と想いを固めていく。そして……
「花の色彩と形状が生命体の視界を高いレベルで刺激するという分析結果が出ています。つまりそれは、綺麗、ということです。」
連接世界を緑が包む。この世界の果てに。
・
その後も旅は続く。このゲーム総体をさらに圧縮したようなインスタント転送世界を潜り、
石化させられたジャングルの動物たちを助け出し、
綱紀編でも行った戦地『ブライトホーム』。しかし前回は見かけなかった宝探しをしている賊が。前情報から言われていた「同じマップでも周回や主人公が違うと別のイベントが発生する」というやつでしょうか。
◆
そしてついに……
衝撃の展開(?)とともに、かつての姿とデータを取り戻した歌姫メカ。今度こそラストバトル!
強い。いよいよ文句なしに強い(ラスボスが)。
それはもうサガのサガとしての「心」ですよ。
というわけで初戦は惨敗。ザコ相手に育成しつつ、パーティ、陣形、装備、技、あらゆる面の見直しを。この見直しタイムが結構楽しかったりもします(尚、ザコがいつまでもザコのままだとは言っていない)。
一応攻略情報的なものはまだまだ封をしているのですが……ああ、公式メディアのレビューで「ディーヴァ編のラスボスは運ゲーのようだ」みたいに書かれていたのはチラ見しましたね。とりあえず自分が感じたポイントは
・かなり状態異常が飛んでくる ・純粋に威力が重い ・殆どの攻撃をガードされる なので、
“できるだけ状態異常耐性をつけて、早めにザコの群れを一掃して、ラスボス本体にデバフ技とガード貫通技(※一定条件で使用可)をメインに撃ちまくろう”。
やるぞ! 育成ポイントとアイテム錬成は用意されてるんだから何とでもなるはずです。
また、ラストバトルは単にバトル難易度が白熱しているだけじゃなく、そのBGMと、一緒に旅をしてきた一人一人の台詞が非常に熱かった。
自分が取り戻そうとしたのは音楽だと証明してみせろと諭される歌姫メカ・ディーヴァ ナンバー5。シリーズおなじみのラストバトル特殊台詞が今回も滾らせる。
ブラーの台詞に声にならない声が出た。
陣形をいくつか試しながら3回か4回敗北し……今度こそ結構削れたラスボスのHP。しかしこちらも徐々に削られ、一人、また一人と倒れていく(今更ですが本作にHP回復は基本存在しません。河津神いわく「戦闘が長くなるだけだから」)。
こちらはディーヴァと瀕死のメカ一体のみ。しかも次のターンはどう立ち回ってもあの『独壇場』をくらってしまう配置。ボスが動く前に倒しきれるか…………覚悟を決めてボタンを押したら、
これまで何度も聞いたディーヴァの勝ち確台詞。勝った。勝ったか……!? 勝て!!
まあ別に運ゲーって呼ばれるほどでもないですよ(勝者インタビュー)。再三になりますがラストバトル直前でも十分育成できますからね。実際もう少し攻略情報が整った頃には「言われていた程でもないな」ってくらいの位置にはされるんじゃないでしょうか、知らんけど。
そうだ、公式メディアレビューと言えばいくつかの記事で「シナリオは淡白」という評価を見ました。
これは本作と言うよりも前作『サガスカ』からの経験なのですが、『サガスカ』は何度も周回を重ねていくうちに世界観の全体像やバックストーリーが浮き彫りになっていく作品でした。そしてその作風らしき手応えは今作でも感じています(そもそもラスレムとか、いや初代ロマサガだってそういう作風が見えてただろとも言える)。
まああくまで前作までの感触なので分からないですが、FF形式みたいなドラマ作りばかりがゲームシナリオでもないだろうということでしょうか。何と言っても私は私の冒険の果てにブラーの激を聞き受けましたからね。
とまあまだ遊びたてのくせに長々と書いてしまいましたが、ようやくサガエメのスタートラインを切ったな、という感覚です。
最高のRPGを駆け抜けていきたいと思います。