hideの2024年版リマスターBOX『REPSYCLE』を購入しました。
hideが遺した3枚のアルバムの最新リマスターと、昨年行われたhide with Spread Beaverのライヴフィルムを収めたBOX作品。──特にhideの急逝後に残されたメンバーで完成させたアルバム『Ja, Zoo』については、hideの相棒・I.N.Aによって『当時完成させられなかった楽曲の追加』『当時はごたごたの中で叶わなかったhideのリミックス案』『よりhide案に忠実な曲順への変更』と大幅な変化をとられたとのこと。
そんな「新Ja, Zoo」から順番にリマスター音源を開けていきました。今日(5月2日)の昼にようやく到着したのでめちゃくちゃ今聴きながら書いています。
※一応述べておくと筆者はどの作品も世代としてリアルタイムで触れてはいません。新規ちゃんです。
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Ja,Zoo
ジャケットにも細かい変化が現れたJa, Zoo。1998年作。先述のようにhideの急遽のなかで何としてもと完成させられた、未完の傑作だった一枚。そんなアルバムだったからか後世的な「hideの傑作盤」としてはあまり名前が上らないアルバムなきらいもあるが、たまに聴くとやはりこの音は唯一無二だと驚かされる。
1曲目のインスト曲『SPREAD BEAVER』からもうかなり好きなんですよね。ジョジョ5部とかが似合いそうなイメージ。
この時点で音が相当良くなっているのがよく分かる……よりバンドの肉感が前面に出たかな? 3曲目『LEATHER FACE』もソリッドに処理された爆音が炸裂していて気持ちが良い。
PINK SPIDER(英語表記verは、元々hideのアイデアで歌の音処理を変える予定だったが、逝去後のアルバムでは「ミリオンシングルを改変する必要なし」というメーカーの意向もあり実現できなかった🥲今回のREPSYCLE verでやっと本来のカタチにできました🤘😎 https://t.co/i7suFAsZmI
— I.N.A.☆hide with Spread Beaver (@area014) 2024年2月27日
『ピンクスパイダー』(PINK SPIDER)はやっぱり「サビ後半のバラードっぽい部分は、バラードみたいに美しくではなく瞳孔ガン開きみたいなテンションで歌ってこそ正解」なんだよな(毎回言ってるな……だってみんな変に綺麗っぽく歌うし)。
『DOUBT』は『TRIBUTE V』のI.N.Aリミックスのversionが一番好きです。
hide案に忠実になったという曲順。1~5に怒涛の「サイボーグ・ロック」サウンドで圧倒し、6~8で「hideらしい遊び心」なテイストで翻弄するかのような流れに。だからこそ『ever free』が実質的なトリを務めるのがやっぱりハマっている。
“デタラメと呼ばれた君の自由の翼はまだ 閉じたままで眠ってる”
「HURRY GO ROUND」は、2018年の映画『ハリゴー』の撮影時に偶然に見つかった別バージョンの歌テイクをベースに再編集。実際に制作作業を進めると98年当時の痛々しさが音に溢れてまくってることに気がついて😭オレも必死すぎるほど必死だったんだなと実感😎< 26年経ってやっとフラットに作れました🫶 https://t.co/i7suFAsZmI
— I.N.A.☆hide with Spread Beaver (@area014) 2024年2月27日
『HURRY GO ROUND(REPSYCLE ver.)』 めちゃくちゃ変わってる! 別テイクの歌声が使われている点もそうだし、バラード風な98年ver.よりも軽快な躍動感が出たというか。98年ver.ではぎこちなさそうに浮いていたギターノイズもようやく楽曲の地層へと還れたかのよう。
曲順の変化も手伝って、楽曲の立ち位置がLUNA SEAで言うところの『MOTHER』から『BREATHE』辺りへ移動した(在るべき位置にようやく帰った)ようなきらいもあります。
ジョジョ5部と言えば『BREEDING』はディアボロみたいな歌ですね。ムシ達と歩いて行こう、鬼達をかわしながら。
『PINK CLOUD ASSEMBLY(REPSYCLE ver.)』──このトラックは、わざわざこの御時世にこのBOXを買った人の耳にだけ届けばいいのではないでしょうか。松本秀人とI.N.Aが作ってきた2024年の「hide」が。
PSYENCE
1996年作。まさに「ああだこうだの過多書きよりも曲がすべて」なアルバムなので先立って書くことはないと思いますが……。
……このソロアルバム&ツアーとXの新作アルバム&ツアーとzilchの完成を同時進行させていたという96年のhide。文字通りに人の何百倍のスピードで生きていったとしか言いようがない(全部伝説的な傑作なのがまた脅威だ)。
【PSYENCE以降にギターサウンドが変わった理由】1stまでは、基本、1台のギターアンプで音作りをしていたので、音作りにすごく時間がかかっていた。HiをあげればMidが減り、歪み調整すればLowが変わっちゃうといった感じで、音のバランス調整が非常に難しかったし、なかなか思い通りの音が出なかった。… pic.twitter.com/L2XWKY8mKl
— I.N.A.☆hide with Spread Beaver (@area014) 2024年4月28日
ギターの音がかなり広めに聴こえる……。『限界破裂』は相変わらずカッコイイ曲。『DAMAGE』も原曲の音数少なそうな印象がなくなり突撃戦車のようにヘヴィなインダストリアル・ロックに。
『LEMONed I Scream』は、リミックスアルバムのこっちの方がお気に入りだったりします。
hideはその時代のギタリストにしてはあまりシューゲイザーに走らなかったかな? と思っていたけど『FLAME』はしっかりシューゲイザーでしたね。好きなわけだわ(思い出したように)。
そして姉妹曲こと『MISERY』のギターリフは実はかなりディーパーズの影響だったんじゃないか? と最近ふと思ったりもしたのですが、どうなんでしょう。
最新サウンドのこの曲が聴ける悦びを
I.N.Aはあんまり納得していなかったという『LASSIE』もしっかりサイボーグでパンクな感じに(むしろこれが一番『Ja,Zoo』に近くなっちゃったような……)。
『POSE』はむしろギターや重低音以外の音のほうが通りよくなって「近未来的謎SE空間」みが増したよう。
『MISERY』は、ピースフルで泣けるのは勿論なんですけれども、その上に「ギターのうるささ」と「オシャレな印象」が最高に炸裂しているんですよね。オシャレとは……『質素でも装飾過多でもなくしかし没個性的でもない、独特のカラフルさを的確に撃ち抜いている』みたいなことかもしれませんが。hideじゃん。
そんな印象まで引っくるめて、一番好きな曲を挙げろって言われたらやっぱり『MISERY』かなあと思ったりします。
HIDE YOUR FACE
1994年作。ソロデビュー作……聴けば聴くほどこれがデビュー作だという事実に圧倒される。今となってはアルバム単位ならこれが一番好きかなあとも思う。
『PSYCHOMMUNITY』もインストながら大好きな一曲です。いや、「hideのテーマ(ロックの住人・松本秀人のテーマ曲)」と思える曲は結局これじゃないかなとも。
『DICE』、もう昨今はこんなにドライかつストレートに “夢に挑むこと” を歌うミュージシャンなんていなくなったような気もする。そしてそんな歌詞の説得力が誰よりも高い人達だった。ギターソロ(と後ろのBozzioのドラム)が鬼格好良いのだ。
『SCANNER』は……いっつも「愛のデュエット」ばっかり聴いてます (笑)。
『EYES LOVE YOU』はライヴ盤を聴くと淫靡で良いんですよね。エロティックでソドムなロマン小説みたいなムード。全体的に1stはライヴアレンジまで含めてで完成だという印象。
『A STORY』の音の一つ一つが大きくこだましている……。『DOUBT』よりも『FROZEN BUG』の方がインダストリアル度数が跳ね上がった感じがします。初代DOUBTは色々とあれで完成されきっていたということでしょうか。そしてここにきて全貌を見せてきた感のある短曲『T.T.GROOVE』……(笑)。
青い空の下に隠れた名曲
これでもう「古い洋楽みたいな曲」とは言わせない良リマスター。ブラスの威力が抜群、T.M.Stevensのベースも踊りうねる。
『OBLAAT』 初めてこの曲を聴いた時の「音・メロディ・歌声・歌詞すべてで趣味ゾーンをメッタ刺しされた感覚」と「2nd Tourでのステージを初めてフィルムで見た時の衝撃」はもう一生ものなんだろう。
“ほころびている傷を埋めるのは 僕が僕で在り続けるため”
『ever free』と並ぶ、社会に擦れるほどに刺される歌かなあと思います。だからきっと、多くの誰かにとっての一番大事な歌なのかな。
Singin' my song for me.
Singin' your song for you.
「自身のロック意識をありったけ詰め込んだソロデビュー作」の、「仮にもデビュー曲のアレンジ」で、アルバムのラストにこれをやる美系ロックミュージシャンはそうそういない。
リマスタリングを確認しようと言いつつ途中からもう普通に『HIDE YOUR FACE』に熱中しちゃったな (笑)。
流れなので(?)、そのままzilchも聴いていました。当時も完成から発売までに2年近く難航したという怪作。もう再販も何も基本無理なんだろうなあこれ。
どこか取っつき難いイメージがあるかもしれないけど、むしろ一番シンプルでストレートなロックンロールのアルバムではなかろうか(但しゲロゲロにヘヴィなのに一切粗くないという)。
まあこう、「同時期で対極にあるアルバムがSUGIZOの1st」ともパッと思ったけど (笑)。はっはっはっ。hideの “音楽人的なアイデアや技巧は裏方に、曲のキャラクターとストレートなアティテュードを前面に出す” 作風がここでもよく表れているというか。
格好良すぎ!
あっ、聴きながらPATAの本読もうと思ってたけどそんな余裕はなかった……(I.N.Aの本は一応初版持ってるので加筆版はそのうちに)。