2023.12.29 バクチク現象2023(後編)〜「オレ達は強い。」

 

2024年正月、酒でも呑みながら(呑まされながら)ゆっくり残りの日記を書こうと思っていたら(酒呑み日記リスペクトか?)、全然そんなムードじゃないニュースばかりになってきた。自分の知人で直接被災された方はいなかったと思いますが、一人でも多くの方の救出・援助とそれを実現させる経路が行き届くことを願います。

 

 

 

 

と年明けのニュースが気になりつつも、自分個人の宿題として少し時間を巻き戻して──

 

 

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2023年12月29日日本武道館、『バクチク現象 -2023-』に参加した話。

前回はライヴへと向かう自分の気持ちとアンコール途中の各メンバーMCについて触れたので、

 

 

今回はセトリ、純粋な公演内容的な部分を振り返りたいと思います。

 

……

 

 

 

SE. THEME OF B-T

 

不安や未知の緊張感に包まれた会場に、しかし毅然と流れ出すお馴染みのSE。体感、曲の盛り上がりどころまでの前奏が長く、そしてバキバキにインダストリアル的な加工がなされていた気がする。「戦意」「やる気」、そういったものが既に伝わってきそうなオープニングSEだったか。

そして一人ずつではなく、ほぼまとまって登場したように見えた楽器隊の4人たち。……見慣れた「最後に現れる黒い麗人」が出て来ないステージ。しかしOPスクリーン映像の最後に、まるでスクリーン前にその男が立っているかのように櫻井敦司のシルエットが映し出されていた。

 

 

01. 疾風のブレードランナー

 

   Ten death Waiting for every one…

…Every one pleasure song

 

“……Zero” の辺りで、今井寿が叫んだ。

「さあ、始めようぜ!BUCK-TICKだ!」

 

疾風のブレードランナー

疾風のブレードランナー

 

爆風を巻き上げるように広がりゆくバンドサウンドに、櫻井敦司の歌声が聴こえてくる。

やっぱこの曲なんだよな! 12月29日はBUCK-TICKライヴの日、宝物だ、約束だ。『加速する俺は疾風  お前はロータスという歌詞について、当時櫻井さんが乗っていた車がロータスだったと聞いて、情報元は知らないけどもしそうならこの一曲目にまたなるほどと思わせられる。『忘れるな  世界は輝いている』

間違いなく、この曲一発で迷える会場の空気を掌握しきったと思う。きっと今後この曲が語られる時は今回のライヴがセットで語られ続けていくのだろうな。

 

 

02. 独壇場Beauty

ああこれは今井さんからのストレートな豪速球が続くな、と確信させられた流れ。なあ「神様も使えないな」。

筆者はこの曲にある「追悼=人生賛歌」の姿勢が本当に大好きだという話は……演るたびに書いているような気はします(笑)。意外と「知らなかった」っていう方も見かけるので、こっそり言い続けないといけないんだなあとも。

 

 

03. Go-Go B-T TRAIN

今井さんの「乗り遅れんな〜」の掛け声と共に。前半部はもう一曲一曲始まる度に今井さんが何か言葉をかけていた。

この曲、個人的には「微妙なタイミングで『PARADEその2』みたいな曲出してきたな」と、なんというか扱いに困る印象もある曲 (笑) だったんだけど、色々とメモリアルでアイコニックな位置づけになったな……と。

曲の合間に櫻井さんの「オウ!」とか「ベイベェ!」とかの煽りボイスが入る度に、「実は櫻井さんは舞台裏でお休みしながらも会場を覗きつつマイクを持ってるんじゃないか?」と思ってしまうものがあった。

 

 

04. GUSTAVE

今井さんの「ニャ!」と共に(今更だけどおもいっきり「今井側席」だったのでマジで今井さんの話ばっかりですね)。本編中はギター2人ともめっちゃ動いてるなーという様子でした。

 

 

05. FUTURE SONG -未来が通る-

今井「ス・ス・メ・ミ・ラ・イ・ダー!」

櫻井さんのボーカルも入りつつ、星野さんが櫻井パートを歌っていたことが話題を攫っていた……けど現場では全然気づけなくて申し訳なく……。

星野さんが歌っていくのもアリだし、魔王ボーカルが天から降ってくるのもアリ、また3人の歌声が集うのだってアリ。楽曲FUTURE SONGの未来は明るい。

 

 

06. Boogie Woogie

そして最新の「ロックバンドBUCK-TICKの歌」へ。

ここまで非常にバンドサウンドの肉感や躍動感が前面に出る曲が並んだセトリ。4人になったメンバーの意志というのも勿論だけど、もう一つに『バクチク現象』の名を掲げた故の選曲でもあるのかな、とも。デビュー当時や惡の華直前の『バクチク現象』を今起こすならこうだ というような。

 

 

07. 愛しのロック・スター

愛しのロック・スター

愛しのロック・スター

DER ZIBET・ISSAYさんとのデュエット曲。昨年? のアニイバースデーライヴでISSAYさんと共演して披露した時の映像がスクリーンに流れていた。2人のフロントマンへのレクイエムが愛しのロック・スターの名の下に。
 

 

08. さくら

開始前の今井さんの “桜舞い散るギター(ピロピロピロピロ……という音)” が鳴り始めた時点でまさか演るのか……と身構えてしまった、正真正銘の鎮魂曲

死んだ者へというよりは、遺された者の曲じゃないかなあ、とも思う。レクイエムって全部そういうものかもしれないですが。

 

 

09. Lullaby-III

スクリーンの櫻井敦司が蝋燭に火を灯す映像と同じくして、ステージ中央の蝋燭に火が灯され、その蝋燭がボーカルの立ち位置に座される。

嬉しい話ではないものの、私はこの辺りのステージングを「見えざる魔王の部」と称したい。

 

 

10. ROMANCE

手元になくて確認できないが、確かTHE MORTALの時のRolling Stone誌インタビューで櫻井さんは「僕自身は霊的な存在でありたい」と語っていたと思う。彼の表現者としての姿勢であり、またゴシック・フロントマンとして目指す境地だろうか。

「見えざる魔王の部」は、彼のそのパフォーマンス観を受け取り引き継ぐものとして、ある種の仕上がりを魅せていたと思う。

 

 

11. Django!!! -眩惑のジャンゴ-

今井さんが出だしに弾くギターでは何が始まるのかイマイチ分からないジャンゴ(流れ的にキラメキかと思いました)。使われていたスクリーン映像は昨年の横浜アリーナ公演と同じものかな。

 

 

12. 太陽とイカロス

これもFT会報での星野さんの言葉を思うと「演るのか、これを」と思ってしまった一曲。BUCK-TICKはみんな真っすぐに直視するんだな……そりゃああのBUCK-TICKのメンバーですものね。

今年のアルバムツアーと同じスクリーン映像を引っさげて、涼しさを覚えるほどの櫻井敦司の歌声が異空を飛んでいく。

 

 

13. Memento mori

Memento mori

Memento mori

個人的なこの日のベストソングはこの曲でした。何故? うーん、分かりきってるんだけどイマイチ言葉にしきれません。だって、このステージにしてこの曲じゃん!くらいが精一杯ですかね。

 

BOYS AND GIRLS 今宵  喰らい 踊り明かそう

人生は愛と死

BOYS AND GIRLS Baby don't cry ダイジョーブさ

俺達は愛と死

Hey Baby 今は  喰らい 飲み 踊ろう

人生は愛と死

Hey Baby Baby don't cry  愛死合おう

俺達は愛と死

 

 

14. 夢魔 -The Nightmare

Memento mori』の後っていうのが良いですよね。何というか、晴天の祝祭から黒夜の祭儀というか。お祭りに立てた祭壇の上に魔王の像が置かれた感じというか (笑)。案外2曲そのまま繋がっているような。極東の魔王・櫻井敦司ここに在りって感じだ。

 

 

15. DIABOLO

この曲で本編終了。相応しいなあ。

相応しいというのは、この曲に今井さんが狙うゴシック像と櫻井さんの趣向が一番いいところで溶け合っているような印象があったというのもあり。そして今日を進むために必要な曲だったような、よく分からないですけれども。

「乾杯しようか。──乾杯! ありがとう。みんなも帰りに乾杯して、BUCK-TICKの話、あっちゃんの話をしてください。」

 

 

 

 

 

EN1. STEPPERS -PARADE-

久々に披露された気がする今井サイドのPARADE。闇をゆけ。

「パーレイ!(パーレイ!)」のどっちで腕を大きく上げるかで感性が櫻井寄りか今井寄りかが分かるとか分からないとか(結構人によるよね笑。私は今井さんのタイミングです)。

 

 

確かこの後のタイミングでメンバー一人一人のMC。基本的には前回の方で触れておりますが……

……ユータさんのBUCK-TICKはライブバンドなので、ライブをして成長したと思っています」の言葉は、普段からユータさんが言われていることでもあるけれど、それこそデビュー前後に「バクチク現象」の名も掲げながらライヴでより曲のクオリティを高めてきた経験故でもあるのだろうと思う。どれだけスタジオ時点でのクオリティが高まっていこうと、やはりライヴでどんどん手応えを掴んでいって仕上がりなのだという。私もそう思う。

 

今井「──それでも(パレードを)続けるんで、みんなを連れて行きたいと思っています。」

 

 

EN2. ユリイカ

 

あなたに恋をした 全て消えて失せろ

 ABRACADABRA Woo! Yeah! Ready, steady, go!

 

前回の方で “「パンクとは、反旗である以前に希望への突撃力だ」というようなことを、ずーっと今井さんに教えられているような気がする” と書いたが、この曲がまさにそういう曲だ。いや本当、あの今井さんのMCの後にここまでハマるナンバーはなかなかないだろう。

 

 

そして次の曲に入る前に櫻井さんの「まずは自分を愛してあげてください」みたいなMCが入り、あああの曲かとみんなが思っているところでまさかアニイが入りのドラムをミスり、おっとっと、と変な間ができてからの

 

EN3. LOVE ME -破綻-

まずボーカルの音声がずれて流れなくなり、演奏の展開も少しずつずれていき、どんどんメンバーがそれぞれ「???」と顔を見合わせ、客席のサビ合唱だけギリギリ纏まっていたような迷テイクに。いやあこれは楽しかった。

見る見るメンバーさん方がえ?え?って顔を見合わせながら事故りちらしていったという。(途中で今井さんが盛大に弾いてる部分ズレたのは、既に演奏とズレている櫻井さんのスクリーン映像に一人だけ寄せようとしたんじゃないか、とか思ってみる。ちゃんと確認したら全然違うかもしんないけど)

それも『LOVE ME』っていうのがね。本当に櫻井さんに「もう俺の声入れなくていいからみんなで歌っててよ笑」って言われているみたいで。「櫻井さんからの悪戯」って言われても「実際そうなんじゃないかなあ」とも思ってしまうタイミング。

何より固いムードが付き纏わざるをえなかった本公演でこの「笑えるシーン」「ていうか笑うしかない状況」が生まれたっていうのが本当に貰い物だなっていう。BUCK-TICKの核心はユーモアだ (笑)!

 

 

EN4. COSMOS

広大なアンビエントにしてセンチメンタルな大バラード。

──2016年に出されたベスト盤には何曲かずつ各メンバーからの選曲が入れられていたのだが、確か櫻井さんからはこの曲がプッシュされたという話だった気がする。そして忘れえぬ、あの10月19日から24日までに渡ってSNS上でファンを中心に流れはじめた「#愛だけがそこにある」タグ。

そのSNSでの流れを受けての選曲だったのかな、とも思う。この日、会場は櫻井さんの歌声と共にCOSMOSを合唱した。

 

 

EN5. 名も無きわたし

そして、現最新アルバムの最後の曲へ。異空ツアーでも度々披露された一輪の白い花から始まるスクリーン映像が、COSMOSからそのまま繋がっているかのようだ。

 

曲が終わり、メンバーがまた捌けていく。『異空』が過ぎ去っていく。再び鳴るアンコールの手拍子。BUCK-TICKは年明けからは新作の制作に入るという。異空を離れた先には、何があるんだろうか──。

 

 

 

「行こう! 未来へと、行こう! “New World”」

 

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New World

New World

EN6. New World

 

やはり最後はこの曲だった。この曲しかあり得なかった(BUCK-TICKの膨大な名曲たちを前にしても)。出世したなあ!

 

夜空にきらめく星屑綺麗ね 

みんなひとりね

小さな世界 君の世界 

悲しい世界 君は涙

夢見る世界 君の世界 

可笑しい世界 君が笑う

 

 

──少し今回の震災の話に戻ってしまいますが、「被災地に出来ることをしたいし、しなきゃいけないな」とも思う一方、「みんなで力を一つに!」みたいなことを言われると嫌だなあと思ってしまうところもあって。私なんか特にそういう奴なんです。その「みんな」を統一したり扇動したりすると絶対に嫌な綻びが出てくるし、何より元々他人に熱意を押しつけられることも苦手だし。「大変だろうけど、重苦しい話に関わるのはしんどいな」って気持ちも誰にだってあるだろうし。

だからこそ、10年ちょっと前に『MISS TAKE』で今井さんが「何にもないこんな世界だ  名を叫べ  名を叫べ」と放ったのは、“被災者へもそうじゃない人へも、一人一人全員を鼓舞できる合言葉” として凄いメッセージだなと思ったし、こういう途方もないどうしようもなさを前にした時にある「叫び出したい感情」の導き方をよく分かっているなあとも思わされた記憶がある。

そして櫻井さん作詞による『New World』。「みんな一人ね」という、例え小さな存在でも “個” を尊重する歌詞にもまた深い共感と感銘を覚えさせられました。「みんな一人ね」は「みんな」に属せない私のような人達にとって一番の励みであり、優しく包みながら背中を押してくれるようなフレーズだった。

 

 

これが世界 君の世界 

夢幻の闇 君は流星

まばゆい世界 君の世界 

無限の闇 切り裂いてゆけ

 

 

 

終演後の会場に流れだした惡の華 -2015 MIX-』は、孤のカリスマ・BUCK-TICKは依然漆黒の旗をはためかせているぞと言わんばかりのギラギラを放っていた。

 

この日に至るまでの全てを貫いて、バンドメンバー、そして会場スタッフ、短い期間でこのステージを実現させた全ての人々、全員の底力を感じさせる公演でした。こんなに「強さ」を感じたライヴはない。この公演に携わった全ての方々に多大な感謝と拍手を送ります。

 

2024年。行こう。未来へ、行こう。

BUCK-TICKで育った僕や私ならきっと大丈夫だ。